研究論文 咬合三原則と臨床
はじめに:なぜ「噛み合わせ」で悩む方が多いのか
咀嚼(食事の際にかみ砕くこと)における噛み合わせの問題は、お口の中の調整(咬合調整)を行うことで改善されるケースが多く存在します。
しかし、日常の身体の動きに伴って生じる顎の動きを妨げる歯の形態(かたち)が存在する場合や、顎の位置(顎位)が大きくズレている場合、単に歯を削る調整だけでは解決しきれないことがあります。
文京区のグリーン歯科医院では、いきなり歯を削る処置を行うのではなく、まず「スプリント(マウスピース)」を作成します。これを用いて理想的な噛み合わせのシミュレーションを行い、顎のズレを改善・予防するアプローチをとっています。
当院には、ほかの歯科医院で治療を受けた後から噛み合わせの不調を感じ始め、その後どこへ行っても症状を解ってもらえずに悩まれてきた患者様が多くご来院されます。
当院では、多角的な視点から身体の不調と噛み合わせの関係を分析し、臨床に応用してきました。
歯科臨床における「咬合三原則」の解釈
元・東京歯科大学学長の石川達也先生が提唱された「咬合三原則」という考え方があります。当院では、この三原則を臨床経験に基づいて次のように捉え、治療に活かしています。
咬合中心軸と人間の行動
身体のバランスと復元
筋肉は持続的に収縮させた後、反対方向に伸ばしてストレッチを行わなければ、痛みや張りといった不具合が生じます。筋肉は身体の中心に向かって「復元運動」を行うことでバランスを保っています。
身体の癖と首(頸)の動き
左右の軸のブレは、外傷の後遺症などで使いにくい部位をかばう姿勢や、動きが制限されている場所の影響によって生じます。さらに、首の回転や動きに影響を与える「歯の当たり方」を考慮することが重要になります。
咬合調整の再認識
「高い」のか「低くて強く噛んでいる」のかの見極め
噛み合わせのチェック紙(咬合紙)で色がついた際、本当にその歯が高いから色がつくのか、あるいは噛み合わせが低いために安定を求めて患者様自身が強く噛み締め過ぎているのかを見極める必要があります。
下顎の自由性の回復
いずれの場合においても、下顎(下あご)が前後左右へ自由にスムーズに動ける環境(自由性)を取り戻すことがポイントになります。
休みの接触(レスト)
持続的な接触の回避
人間は一日中歯を強く合わせているわけではありません。歯と歯が触れ合う瞬間の中にも、筋肉や関節が休まる「レスト(休息状態)」が存在します。
グリーン歯科医院における具体的な診断・検査法
当院では、お口の中の状態がどのように身体へ影響しているかを把握するため、以下の検査と分析を組み合わせます。
触診と開閉口運動の観察
お口の中の触診(必要に応じて頭部・首周りの触診)を行い、顎の開閉運動の記録・観察を実施します。筋肉のコリやお口の中の狭さが、スムーズな動きを阻害していないかを確認します。
姿勢の観察と「プッシングテスト」
姿勢の写真を撮影するほか、前後左右から患者様の身体に手を添えて加圧するバランス検査(プッシングテスト)を行います。
ふんばりが利きにくい方向を確認することで、どの部位の筋力バランスが低下しているかを探り、それが噛み合わせの不具合と重複していないかを確かめます。
O-リングテスト(筋反射テスト)の活用
母指対立筋(親指の筋肉)などの筋反応を利用するO-リングテストを活用し、噛み合わせの刺激が神経系や筋肉の緊張に与える影響を確認します。
段階的なシミュレーションと治療プロセス
いきなり歯を削る処置(不可逆的な処置)を行うことは、患者様にとってリスクを伴います。
当院では、段階を踏んだ安全な手順を徹底しています。
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- STEP 1精密分析と模型分析
- 全身の姿勢・触診・プッシングテスト・咬合採得を実施
ハルト式などの模型分析を用いて骨や筋肉の基準位置を確認
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- STEP 2スプリント(マウスピース)による事前確認
- 現状の歯列に合わせたスプリントを作成
高さの調整や不足部分の付加をスプリント上で行い、理想的な状態をシミュレーション
日中に装着いただき、頭頸部の緊張緩和や朝起きた際の体調変化を観察
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- STEP 3精度の高い仮歯(暫間補綴物)での検証
- 院内技工スタッフの協力のもと、咬合面シェルや仮歯を作成して最終確認
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- STEP 4最小限の処置・補綴治療
- 体調の改善が確認された段階で、得られた情報を基に実際の歯の微調整や補綴処置を実施
噛み締めが引き起こす頭頸部の緊張とセルフケア
噛み合わせの不調(低位咬合や深い咬み合わせ)が存在すると、下顎が奥へ押し込められた状態(下顎後退位)になりやすくなります。
特にデスクワークなどで長時間下を向く姿勢をとる場合、下顎がのど(咽喉部)へ接近するため、無意識の噛み締めが生じやすくなります。噛み締めによって持続的に緊張した咀嚼筋や首周りの筋肉は硬くなり、血流の低下や首の可動域制限、痛みを引き起こす原因となります。
口腔内マッサージ指導と意識の共有
当院では、施術によるコリの緩和だけでなく、患者様ご自身がお口の中から咀嚼筋をほぐせるよう「マッサージの指導(セルフケア)」を行っています。
日常のコンディションをご自身で整えられるようになることで、「歯科医師におまかせするだけ」の受動的な立場から、共に協力して回復を目指す体制をつくります。
東京歯科研究会における臨床思想と「大和医学」
当院の診療方針の基礎には、東京歯科研究会での長年の臨床指導と研究があります。
「来た時よりも悪くするな」
東京歯科研究会会長・金子暁先生の提唱する言葉であり、歯科治療において過去に一度削ったり神経を取ったりした歯は元に戻らないという厳重な認識のもと、治療によって状態を悪化させないための精度の高い診断と技術が求められます。
「Dentistry is Occlusion(歯科医療の本質は咬合にある)」
歯は食べ物を噛むためだけでなく、姿勢や身体を支える構造体としての役割を果たしています。
噛み合わせの不調は、首の骨(第二頸椎)の位置や脳への血流、全身の姿勢にまで波及するため、局所的な虫歯・歯周病の治療にとどまらず、身体全体の調和を考慮した「全身咬合」の視点が不可欠です。
当院では、800年続く伝承医学「大和医学」の「病気を身体のバランスの崩れとして捉える」理念に基づき、一般的な補綴理論と独自の分析手法を組み合わすことで、患者様が安心して受けられる噛み合わせ治療を推進しています。
院長より
噛み合わせからくる不調は、一般的なお口の中の点検だけでは見落とされてしまうことがあります。
当院では、科学的な知見と臨床実績を基に、身体と歯の両面から原因を紐解きます。
長年の不調にお悩みの方、治療後に噛み合わせの違和感が取れない方は、一度当院へご相談ください。